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視点を持って業界を読み解く。調剤Scope

分包機の
『当たり前』を探る。

散薬分包機

PTPシートの払出しまでが自動化の検討をされる時代になったいま、もはや、空気のように『当り前』の存在になった感があるのが散薬分包機。しかし、『当り前』になっていくまでには、これまでに数々のメーカーが試行錯誤して辿りついたプロセスがあるに違いない。
今回はそうした視点で、散薬分包機の『当り前』になる以前も振り返って、少しばかり懐古主義で先人の功績に思いを巡らせてみたい。

散薬分包は最も過酷な調剤業務

 医薬品に錠剤・散剤・水剤・軟膏・注射など色々な剤形があるように、調剤業務にも様々な業務が存在してきた。中でも、散薬の分包は、日本特有の医薬品文化もあり、世界に例を見ない処方比率を占めてきたようだ。ところが、この散薬分包、作業に掛かる手間と時間が他の調剤業務に比べても非常に大きく、薬塵の吸引という薬剤師を悩ませる障害もあったため、何とか機械化できないか?という意向が当初から強かった。(Photo01)

S40年代。スライド分割機構が席巻

 昭和40年代に入ると、それまで使い始められていた散薬分包機は、『スライド分割機構』を用いて、画期的に省力化が図られた。なぜなら、それまでの初期タイプの分包機とは異なり、わざわざ1回服用量の散薬を量り取らなくても、機械がVマス部に投入された散剤を均等に分割してくれるからだ。しかし、ヘラで均すというテクニックは、まだまだ薬剤師に求められたのも事実だった。(Photo02-03)

『当り前』は現代にも活き続ける。

それが本当のスタンダード・テクノロジー

S50年代後半。R円盤で全自動化!

 昭和も50年代後半になると、今でもおなじみのあの分包方式が登場してくる。それは『R円盤方式』。スライド分割機構で確立した左右の動きとはまったく異なる円運動方式を採用することで、ついに散薬分包機は全自動の時代に突入する。
 もう、ヘラでVマスに投入した散剤を均等に均すテクニックも不要、最初に1処方分の散剤を量り取りさえすれば、それを専用のホッパーに投入するだけで、機械が勝手に均等分割・分包を行うという画期的な発明だった。
 当然、当時の薬剤師の方々にもこの全自動というコンセプトは大いに受け、みるみるこの『R円盤方式』を搭載した分包機が市場に浸透していった伝説の機構だ。(Photo04-05)

分包機のスタンダードテクノロジー

 ここまで見てきた散薬分包機をエポックメイキングな進化に導いた技術である、『スライド分割機構』と『R円盤方式』は、なんと現在の分包機においても標準的な機構として採用され続けている。しかも、分包機を製造・販売しているほとんどのメーカーで採用されている機構だ。もちろん、現代の分包機には、昔には無かったような付加価値が備わってはいる。それでも、昭和40年代、或いは50年代に発明された機構が各社で今でも採用されているということは、それらの技術的優位性、及び安定性が証明されていることになるのだろう。そして、この2つの機構、いずれも湯山製作所によって発明された技術であることは、意外と知られていないかも知れない。

(文責:2011年4月 森 和明 ㈱ユヤマ 営業企画部部長)

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